コラム

公開日:2025/5/30
著者:田村好史先生 順天堂大学大学院医学研究科 スポーツ医学・スポートロジー 代謝内分泌内科学 教授​

「たくさん食べても太らない」「周りからうらやましがられるけれど、実は体重を増やしたい!」そんな悩みを抱えている方はいませんか?

人の体型は実に多様で、生まれ持った体質(遺伝など)に大きく左右されます。その中でも「体質性やせ」という特性があることをご存知でしょうか。これは、ダイエットや過度な運動をしているわけでも、痩せたいと考えているわけでもないのに、長期間にわたって低体重の状態が続く体質的な特徴のことです。

体質性やせの方は一般的に体重が増えにくい傾向がありますが、ホルモン分泌や月経周期は正常に保たれていることが多いとされています。18~29歳で日本人女性の痩せている方の約40%が、意図的な減量行動をしていないという報告もあり、体質的な要因の存在が示唆されています。

体質性やせは病気ではありませんが、長期的な健康管理において注意すべき点があります。最も重要なのが骨の健康です。低体重の状態が続くと骨密度が低下するリスクがあり、若年期に十分な栄養を摂取できていないと、将来的な骨粗鬆症や骨折のリスクを高める可能性があります。

体質性やせの方は概ね健康な方が多いですが、定期的な健康診断を受け、骨密度測定や血液検査で栄養状態を把握すると良いかもしれません。また、総エネルギー摂取量だけでなく、ビタミンDやカルシウムなど、骨や全身の健康に重要な栄養素をバランス良く摂取することを心がけましょう。

体質性やせは生まれ持った特性であり、それ自体を責める必要はありません。重要なのは、自分の体の特性を理解し、それに合わせた適切なケアを行うことです。体型の多様性を受け入れながら、将来にわたって健康を維持するための知識と習慣を身につけることが、健やかな人生を送る鍵となると思います。

公開日:2025/5/23
著者:田村好史先生 順天堂大学大学院医学研究科 スポーツ医学・スポートロジー 代謝内分泌内科学 教授​

「食べなさすぎ」による体調不良=低栄養が、若い女性から高齢者まで幅広い世代で問題になっています。
低栄養とは、健康を保つために必要なエネルギーや栄養素が不足している状態を指します。エネルギーが足りなければ体重が減り、体格指数(BMI)が18.5未満になると「やせ」とされ、栄養不足のリスクが高いと考えられます。

では、実際にどれくらいの人が当てはまるのでしょうか?厚生労働省「国民健康・栄養調査(2023年)」によると、20代女性の約20%がBMI18.5未満のやせに該当します。さらに、30代以降の女性にも依然としてやせている人が多く、必要なカロリーを摂れていないケースが少なくありません。その背景には、強いやせ志向や「太りたくない」という気持ちがあり、1日あたりのエネルギー摂取量が不足している人が多いのです。
エネルギーだけでなく、栄養素の不足も見逃せません。たとえばビタミンB群や鉄、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質などは、現代女性が特に不足しがちな栄養素です。研究によると、見た目には健康そうでも「隠れ低栄養」状態にある人が多いとされています。

では、どう気づけばよいのでしょうか?「疲れやすい」「肌が荒れやすい」「生理が不規則」などの症状があれば、栄養不足が関係しているかもしれません。また、骨密度の低下、貧血、筋肉量の減少も低栄養のサインです。放っておくと、将来的な健康リスクにもつながります。
このような低栄養は、日常の食べ方のクセや無意識のカロリー制限から始まります。
無理なダイエットや、サラダだけの食事、菓子パンや飲料で済ませる習慣など、思い当たることはありませんか?
まずは1日3食をきちんと食べ、主食・主菜・副菜をそろえることが大切です。
あなたの「なんとなく不調」は、食生活の見直しで変わるかもしれません。
今こそ、自分の体と向き合い、「本当に必要な栄養」を届けてあげましょう。